【 電脳雑記帳 】

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◆2007/3/23 発売

■エロゲ:『きみはぐ』 1stインプレ

きみはぐ』 ¥9,240(税込) 制作:Front Wing

子供の頃に些細な一言から女の子の心を傷つけたことがトラウマとなり、恋愛に臆病になってしまった主人公だったが、ある日であった転校生の少女にときめきを覚えてしまう。トラウマによって自分の思いすら満足に自覚できない彼を見かねた幼なじみが差し伸べた救いの手は、秘密の同好会『恋愛同好会』だった。しかもなぜか、主人公が一目惚れした転校生まで同好会のメンバーになってしまった。恋を学び素敵な恋の成就を助ける同好会の活動を通して、トラウマを克服していく主人公であったが、果てさて、彼が本当に恋する相手は誰なのだろうか?

そんなこんなで本作は、5人の女の子と主人公との恋愛模様を描いた純愛系18禁恋愛アドベンチャーゲームです。この手のジャンルとしては珍しく(?)複数人プレイやハーレムHはなく、比較的スタンダードな学園恋愛モノと捉えた方が良いでしょう。


■グラフィック・演出について

 エロゲ原画家としてそれなりに実績のあるINO氏だけあって、登場人物は魅力的だ。ただ若干塗りの完成度に斑が感じられること、立ち絵のバリエーションがそれほど多いとはいえず(大きさ違いもあるので枚数自体はあるようだが)会話画面の演出がちょっとおとなしめに思えたのは、ラブコメ演出の上で損をしていたように感じられた。あと、全体的に表情が少し硬い印象を受けたのは残念でした。けして感情が感じられないわけではないのですが…。

■ストーリー/テキストについて

 シナリオライターが6人もいる割には、全般を通してストーリーはかなり”薄い”印象を受けた。恋愛にしろエロにしろ、定番の展開をなぞっているだけで、そこに深みがない。本作ならではの「らしさ」が感じられないのはまあいいのですが、王道シナリオの肝であるところの、段取りをしっかり描いてプレイヤーの共感を得る部分が弱いと私は思いました。またコメディ主体なのかシリアス主体なのかといった、作品全体の雰囲気作りが中途半端なのも気になりました。熊とペンギンが浮いてるんですよね…。コメディに振るには、音楽も画面構成もキャラデザインも落ち着きすぎてるし…。

まったく見るところ無し! というほど悪いわけではないだけに勿体ないというか煮え切らないというか。

   と文句ばかり書いてしまいましたが、私としては恋愛感情ゼロからスタートする、美恋とえみりのシナリオはそれなりに楽しめました。美恋は恋人になる前と後での激しいギャップが萌えますね。嫉妬深いみーちゃん可愛いよみーちゃん。えみりは定番ながらも素直になれない高飛車娘の空回りっぷりと、子供みたいに純粋な好意が可愛らしい。ばっちこーいが素晴らしい。香澄と南はキャラ的には悪くないんですが、ヒロイン視点の描写が多いこともあって「読まされている」感が強かったのが、私にはマイナスに働いた模様。もうひとりは……一番つまらなかったというのが私の印象。エロもひとつは夢オチときたもんだ。

■ゲーム性について

 ストーリー中に発生する選択肢の選び方によって、かなり早い段階でルート分岐が発生します。システム的には単純なのですが、プレイヤーにとって厄介なことに、選択肢の内容が主人公の明確な意志性を表していないのがちょっと問題。要するに、「誰々を好きだ」「誰々に会いに行く」といった明確な選択肢がほとんど無いので、プレイヤー側の「誰々を攻略しよう」という意志がハッキリとゲームに反映しづらいのです。きづいたら誰かのルートに分岐しているというのは、恋愛に臆病な主人公の気質には合っているのかもしれませんが、個人的には二択の相性診断でもしてるかのような印象を抱きました。

■エロについて

 女の子のオナニーシーンもほんの少しありますが、エロの大部分を占めるのは、主人公とヒロインとの和姦です。本作のようなコンセプトだと「Hを交えた恋愛指導」という流れから多人数プレイになりがちなのですが、「きみはぐ」ではそういった展開がまったくありません。全員処女なのに最初から感じたりと純愛系らしい構成です。

メインヒロインである香澄と南が本編中エロ1回ずつなのは悪い冗談かって感じですが(香澄は2Rある分ましだが)、クリア後に解放されるおまけシナリオで補完されているのが救いです。

エロ描写的には、喘ぎ声主体で説明描写が少ないため、個人的嗜好としては”薄い”部類に入ります。せっかく前擬シーンが長くても、責め方の描写がほとんどないので萌えないんですよね…。また本作のHシナリオ構成で不満を抱いた点として、本編上で語られなかったエロシーンの存在があげられます。特に美恋の初エッチ後になされたという三連チャン、全シーン描写は無理にしても、自慰シーン削ってでもこっちを描写して欲しかったところです。

■現在の評価

 目に見えた欠点はないのですが、本作ならではの良さも特に見出せませんでした。そういう意味では完全にキャラの魅力任せなのですが、いかんせんストーリー構成に深みがないため、この種のジャンル好きにとっては王道展開が薄っぺらのワンパターンにしか思えないのが残念でなりません。えみりと美恋のシナリオはそれなりに楽しめたし萌えもしたしエロも悪くはなかったのですが、それも水準以上の良さがあったと断言できるほどでもありませんし。

というわけで評価点は67点とします。王道展開になれてないエロゲ初心者にはちょうどいい内容かもしれませんが、個人的にはあまりお奨めできない作品でした。


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制作責任 九牙 -KYU_GA-
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